底知れぬド変態・吉村萬壱。『ヤイトスエッド』感想

4062153734 ヤイトスエッド
講談社 2009-04-25

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 読んでてイヤな気分になる作家ナンバーワンの吉村 萬壱さんの新作を発見。
 中身をチェックせずに手に取ってみました。

 今回もクチュクチュバーンバーストゾーンのように人々が無惨に虐殺される話かと思いきや、違いました。
 SF的な設定もなし。

 ですが、相変わらずイヤな気分になる要素は満載です。
 6つの短編から本書は成り立っているのですが、どれもこれも劣情で満たされています。
 しかも、純愛に伴う美しいエロティシズムでもないし、かといって動物的な力強いエロでもないのです。
 なんというか、人間の薄汚い部分と結合した気持ち悪いエロで満載なのです。

『イナセ一戸建て』
 ゲイ的な話です。憧れの作家が近所に引っ越して来た&彼女と別れたのをきっかけにゲイな妄想に取り憑かれてしまいます。
 最後の駅前のシーンが、なぜかムダにカッコいい。

『B39』『B39ーⅡ』
 工場で働く男女がエロい事件ばっかり起こす話。
 非常に閉塞感を感じる世界観です。
 でも、最後に急に、何コレ的な展開があってビックリです。何コレ。
 続きが気になって仕方ないのですが、なんと『B39−Ⅲ』もあるみたいです。
 でも、蔵入りになったそうで。なぜ!?
 非常に残念です。

『鹿の目』
 惚れた女性を勝手に神格化してしまうが、あるコトがきっかけでものすごくガッカリする話
 その「あるコト」がなんだか可愛い、と思います、ボクは。

『ヤイトスエッド』
 ルールを守るために生きているような主人公が、同僚の悪意ある策略の標的にされたのをきっかけに、そのカタい性格に拍車がかかる話。
 でも、本書の中で1番救いがあって、気持ち悪くない話かも。

『不浄道』
 潔癖症の主人公が、ある事件(これも気持ち悪い!をきっかけにきたないものに惹かれていくはなし。
 実害?が1番少ないけど、ほんとイヤな話。

 
 ド変態な作品が多いけれど、文体は読みやすく、時には饒舌さが「森見 登美彦」と似たようなおかしみを感じさせることも。

 とか思ってたら、こんなページを発見。

 いやー、吉村さんは心底ド変態なんだな。感動しました。

 お気に入り度=☆☆☆

 直接的な表現がない箇所でも、性的な隠喩で満たされてたり、ちょっとエロ要素でおなかいっぱい。
 次回作が出たら必ず読むでしょうけど。

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