泣くしかなかった『幼年期の終わり』 感想

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫) 幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)
クラーク 

by G-Tools

 タイトルからしてすでにシビれまくりの本書ですが、内容もスゴすぎです。
 この感動は最後まで読んだ人にしか伝わらないとは思いますが、
 正直、読み終わった後には泣いちゃいました。でもなぜ泣いたのか、自分では理解しきないのです。
 悲しさとか切なさとか感動とかがすこしずつ混ざり合った感じです。
 
 ストーリーはこんな感じです。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)

地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。

 「未知との遭遇」はSFのメジャーなテーマで、紹介文だけ読むとそういう物語かと思ってたんですが、
本書の中身は「未知との遭遇、その後」さらに「未知との遭遇、その後、さらにその後」なんですねー。
 
 抵抗不可能な外部の力によって、変質せざるを得ない人間(と人間社会)。
 そこに築かれたユートピアと解かれない謎。
 新しい人類の不可解なダンス。
 行く末が最後に示されるときは、もう泣くしかなかったです。 
 
 ”それ”が成された後、オーヴァーロードは人間のことをうらやましがる、という構造も切ないです。
 オーヴァーロードは作品中で自分で言っている通り「保護者に過ぎない」んですね。
 旅立つ子供について行くことも、行く先で何が起こるかを理解することも出来ないんですね。
 切ない。
 あれ?いつの間に、オーヴァーロードに感情移入しちゃってますよ。
 なんでそうなるかは読んだらわかると思います。
 (新しい人類に感情移入する人がいたら、ちょっと親しくできそうにありません。すいません)

 古典的SFの宿命「ガジェットが古い」というのもそれほど気にならなかった。
 むしろテクノロジー的な進歩を予言してきたSFが、ついに実現された「ユートピアでの人間のありよう」(旧人類の方ですよ)についてまで予言しきってるんじゃないか、とまで思っちゃいました。

 ところで吉村萬壱の『クチュクチュバーン』って『幼年期の終わり』へのリスペクト作品なのではないか、と石之介は勝手に思ってます。
 人類の行く末を見届ける役割を持っているキャラクターもいるし(ジャン/シマウマ男)。
 
  お気に入り度=☆☆☆☆☆
 お気に入り度というか読むしかない度です。

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