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応援したくなる殺人犯 『青の炎』 感想

青の炎 (角川文庫) 青の炎 (角川文庫)
貴志 祐介 

by G-Tools

 倒叙ミステリです。主人公・秀一が、母や妹に暴力を振るう義理の父を殺そうと画策するお話です。
 倒叙モノというと、犯行がどのようにして捜査側の人間に暴かれるか、と言ったサスペンス性で読者を引っ張っていくものだと思うのですが、『青の炎』の場合、主人公の好感度が高いので、「もしかして最後までうまくいくんじゃないか。(殺人は絶対に絶対にしてはいけないことだけど)」という期待感で読み進めてしまいました。
 とはいえ、主人公をいくら応援したとしても、倒叙モノの宿命、ラストは切ないです。
 秀一は鵠沼の自宅から鎌倉の高校まで自転車で通学しているのですが、そのさわやかな行為はアリバイ作りや切ないラストの行動の伏線になってしまっているので、さらに切ないです。
 高校生活の中で起こる出来事なので、青春モノとして読んでも悪くないかもです。

 お気に入り度=☆☆☆(5点満点中)
 貴志 祐介作品じゃなくて、たとえば新人作家の2作目とかだったらもっと点数付けてたと思います。貴志 祐介に対して石之介は、尋常じゃない期待感をもってして読書に臨むので。