天使の囀り (角川ホラー文庫) 貴志 祐介 by G-Tools |
これは傑作だと思います。
初めて読んだ時は、登場人物たちの死は何によってもたらされているか、に対して納得した答えが読みたい、という願望からつい一晩で読み切ってしまいました。
貴志祐介には『ISOLA』という作品があるので、超自然系の解決もあるなと思いつつも、そこに落ち着いてしまったら正直ガッカリだな、というところに、あの回答。いやー、ホント怖い。
”それ”が起こす現象も怖いし、”それ”自体も怖い(というより気持ち悪い)
再読する時は「この行動はアレがアレしてるせいなのか、怖ッ」と楽しむことが出来ます。
お気に入り度=☆☆☆☆☆(5点満点中)
【以降、ネタバレありです】
すべての災厄は人間に寄生する線虫の”恐怖を快感に変える”というひとつの能力?により引き起こされているわけですが、このトリックが物語をすごく芳醇なものにしていると、石之介は感動しています。
話のとっかかりで、被害者は次々死んでいくので、読み始めは「ただ人を殺すだけの存在」を想像してしまいますが、実はその「存在」(線虫)の目的は「殺す」ことではないということが分かります。
線虫がただ人を殺すだけの存在であれば、いかに感染を防ぐか、というだけの話になり凡百な作品になっていたと思います。
でも、「死」は恐怖の対象になりやすいために、各人物の行き着く先が「死」になりがちなだけで、線虫の目的は宿主の「死」ではない。
実際は「死」につながらない人間も存在する。
しかし「死」に行き着かなかった人間は、さらなる過酷な運命を辿る、という展開。
そしてエンディングでは、破滅しか生まなかった線虫の能力による少しの救い。
いやー、堪能しました。
個人的に好きなエピソードとしては、高梨が自殺するところとその遺作。
この部分だけでも読んで欲しい。