楽しんだけど、是と言えない。『女王様と私』感想

4048736280 女王様と私
角川書店 2005-08-31

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 どんでん返しモノで『物語に裏切られたい』という気持ちが沸いてきて、「ならば歌野 晶午作品を読もう」なんて本書を手に取りました。
 表紙も可愛かったし。

 歌野 晶午作品を読む時は、著者本人がそう望んでいるかどうかは別として、そういう期待を抱かざるを得ません。

 ストーリーはざっくり言うと、
 オタクである主人公が美少女に翻弄されているうちに、大変なことに巻き込まれていく、
 という、ちょっとベタなストーリーなのです。

 が、随所に期待していた『裏切り』が散りばめられており、飽きさせません。

 だったはずなのですが……。

=========以下、重大なネタバレ含みます。=========

 ネット上でもラストについては、賛否両論(否が多い)ありましたが、自分も是とは言えません。

 実はこの物語の大部分は主人公の妄想なのです。
 現実と現実に挟まれた妄想。
 少女たちとの楽しいやりとりや、ヒーロー的行動も全て妄想なのでした。

 夢オチみたいなものですが、でも、私はそのこと自体に否定的になっているわけではありません。

 私が気になっているのは、その妄想の部分で決着がついていない、という点なのです。
 正確に言うと『謎』という点では決着は付いているのですが、主人公がピンチを切り抜けていないんです。
 そこが非常に納得いかなかったのです。

『全ては作り話でした』というオチを持ってくるなら、作り話の部分は完全に決着をつけるべきだと思うのですよ。
 そうしないと、本当に「何でもアリ」になっちゃいますから。
 そもそも小説なんて妄想そのものではありますが、だからこそ決着が必要なのです。

 お気に入り度=☆☆☆

 否定的なことを書いてしまいましたが、リーダビリティは高いし、登場人物たちのやり取りを楽んだり萌えたり(?)できると思います。
 真犯人の母親の言い草とか、ひどすぎて最高です。

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