ΑΩ(アルファ・オメガ)―超空想科学怪奇譚 (角川ホラー文庫) 角川書店 2004-03 by G-Tools |
図書館にふと立ち寄った際ふと目に付いた、異彩を放っていたので思わず借りてしまいました。
というわけで何の前知識もなく読んだのですが、たいへん面白かった!
興奮冷めやらず、だったため、他の人はどんな感想を持っているだろうと、書評ページを検索しまくりました。
すると軽くネタバレしているページも多かったので、先に本書を読んでよかったな、と。
私にとって何がネタバレかというと、この作品、実はコメディ要素が満載なのです。
導入は、飛行機事故被害者のグロテスクな描写で始まり、その後はガラリと舞台が変わり人間とは全く違う概念の宇宙生命体『一族』のひとり『ガ』による切ない世界が描かれます。
ここまで読んだときは、壮大で切ない物語を期待して読み進めていたのです。
ところが、諸星はやとが『ガ』と合体したあたりから様子が変わりました。
「ジョワッ」とか「ヘアッ」とか言い出したんです。
ウルトラマンじゃん! これ!
大爆笑してしまいました。
おそらく、そういう展開になるとは知らなかっただけに、衝撃的でした。
主人公の名字が『諸星』である時点で気付くべきでした。
他にもjojoネタやたぶん寄生獣を元にしたんだろうな、と思われるネタも満載。
あと、敵方の名前もふざけてるとしか思えないセンス。
マイケル黒田とかリチャード青木とか。
とはいえ一方で、そういう『超人』や怪物たちが暴れることによって、無残に殺されていく人間たちをグロテスクに表現していたり。
主人公以外で、唯一のヒーロー唐松さんも、主人公が発した放射能?を浴びたせいで、その後の人生が大変になったような描写もあり。
また、最後の最後で『ガ』の本当の名前が明かされた時に「あ! アレを書いた人か!」と気づきました。
元々ホラー+SFの人なのね。
そのように大変にふざけていた物語ですが、最後のシーンは、大変切なく美しく終わって行きます。
おそらく元ネタを全く知らない人が読んでも楽しめると思います。
(まあ、「ウルトラマン」や「JOJO」を知らない人が、本書を手に取るとは思いませんが)
冒頭の『一族』の部分だけでも読む価値有りです。
この部分はちょっとSF色が強いですが。
お気に入り度=☆☆☆☆☆
文体に斬新さはないものの、過不足ない表現によるエンターテイメントでした。
変に情緒があふれ過ぎてる文章より、よっぽど巧いし、気持ちよい文体です。
他の作品も読むことにします。