ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア) 上田 早夕里 東京創元社 2008-03 by G-Tools |
食べ物に関する小説を読みたいと思ってたら目に飛び込んできた一冊。
『火星ダーク・バラード』などの著作で、ややハードめのSF作家という印象があった上田 早夕里さんの著作ということで少し驚きました。
ストーリーは、父が営む和菓子店で働く絢部あかりの、ちょっとミステリ要素のある日常を描く短編集となっています。
実際は絢部あかりは主人公というより狂言回しの役割で、真の主人公は近所の人気ショコラトリー(チョコレート屋さん?)『ショコラ・ド・ルイ』のショコラティエ・長峰、なのかな。
タイトルも『ショコラティエの勲章』ですしね。
以下の六話のショートストーリーから構成されています。
第一話 鏡の声
第二話 七番目のフェーヴ
第三話 月人壮士
第四話 約束
第五話 夢のチョコレートハウス
第六話 ショコラティエの勲章
私が好きだったのは、第1話目ですね。
『ショコラ・ド・ルイ』で、女子高生たちが万引きしたのを見た、と一人の女性が騒ぎだすのだが……。という話です。
この話は、どの登場人物にも少し毒気があって印象的でした。
キャラクターに関して言うと、主人公・あかりは若い女性でありながら落ち着いた、というか少し冷めた目線を持っているのが、作品としては好印象。
題材がチョコレートなので、はしゃぎすぎな女の子が主人公なのかな、と読む前は思っていたので良い意味で裏切られました。
ショコラティエ・長峰も、あかりと似た雰囲気を持っています。
常に冷静で、論理的思考を得意としていそう、という印象。
とか思っていたら、実際にそういうバックボーンを持っている、ということがストーリー後半で明かされます。
(お菓子は理科の実験に似てるって言うし)
ストーリーやキャラクターもさることながら、チョコレートや和菓子の描写が素晴らしいです。
おいしそう!という感情を抑えられません。
私は一般的な男子なので、それほどスイーツに関して詳しくなく、知らないお菓子用語に翻弄されましたが、
読んだ後は、ひとつひとつ大事に食べたくなりますね。
お気に入り度=☆☆☆☆
続編がぜひ読みたいです。
あかりと長峰の関係が、この作品だけだと微妙な距離感なのですよ。