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これは純文学?『クチュクチュバーン』 感想

クチュクチュバーン (文春文庫) クチュクチュバーン (文春文庫)
吉村 萬壱 

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 数年前、読書から離れてしまっていた石之介を読書に引き戻した作品です。
 表題作『クチュクチュバーン』は文學界新人賞を受賞した作品ですが、とてもそうは思えないないようです。たまには純文畑でも漁ろうかという時に、石之介はこれを読んでしまいました。いわゆる純文学とはかけ離れている作品群ですが、その新鮮さが石之介に読書の楽しさを再認識させてくれました。

 収録作3作品は全て、人類が不意に訪れた脅威によって滅亡へとさらされる、というお話になっています。

 でも、石之介は表題作『クチュクチュバーン』が圧倒的に好みです。
 『クチュクチュバーン』が他2作『国営巨大浴場の午後』『人間離れ』と決定的に違うのは、”破滅”の後に再生(と言えるのかは?)があるからです。
『クチュクチュバーン』は”前人類の記憶を残しつつ”新しい世界が続いていくのです。しかもこの世界、人類がなしえなかった「死を克服する」を実現しているようにも解釈することが出来ます。そしてその世界は人間自身の変質によって得ること出来たのです。オオー、素晴らしい。(こういう読み方は誤読かもしれません)
 他2作は、人間は理不尽な外敵にグチャッと殺されるだけの存在になる、だけです。無念。極端に無念。あ、でも作品の出来が無念な訳ではないです。ちゃんと面白いです。

お気に入り度=☆☆☆☆(5点満点中)
クチュクチュバーンだけなら5点です。

 ちなみにハードカバー版には『国営巨大浴場の午後』が収録されていません。
 だから表紙はハードカバー版の方が好きだけど、文庫版を(上記写真)買いました。