隣の家の少女 (扶桑社ミステリー) Jack Ketchum 金子 浩 扶桑社 1998-07 by G-Tools |
『地下室の箱』を読んでも、あまりピンとこなかったので、ケッチャム作品の中でも評判の良い本作『隣の家の少女』にチャレンジです。
主人公(デイヴィッド)の隣の家には3兄弟とその母(ルース)が住んでおり、その家に両親を亡くした姉妹(メグ・スーザン)が引き取られる。
しかし、ある日を境に姉妹への虐待が始まる。そしてエスカレートする暴力行為。メグとスーザンはどうなってしまうのか?といったストーリーです。
主題が少女虐待なので、褒めるのには抵抗がありますが、あくまで作品の評価として言わせて頂ければ、『地下室の箱』に比べてかなり良いと思います。
実は『地下室の箱』では、被害者がどんなに酷い目に遭っても「まあ、結局フィクションだしね」という感覚がぬぐえなかったのです。
ですが、本作『隣の家の少女』を読んでいるときは、まるで本当にあった事件の後日談を読んでいるような気持ちになりました。
なぜだろうかと考えたところ、視点の置き方の絶妙さが良いのかな、と。
主人公の立場は被害者でもなく加害者でもなく「基本的には」傍観者であります。
で、もちろん読者ってのは、完全に物語の傍観者であります。
ということで、主人公の視点が、だんだん読んでいる自分の視点かのように錯覚して、虐待の描写が生々しく感じるんですね。
でも、主人公に対して感情移入しているというのに、突然主人公が「虐待されているメグが悪いんじゃないの」みたいな立場を取ったりするんです。
それが、この作品の怖いところです。
主人公とリンクしている読者(私)は どう考えてもメグが悪くないのを分かっているのに、主人公と同様にメグに対してちょっと苛立ちを感じたりしちゃうんです。
もうひとつ構成が上手いと思ったのが、それまで虐待の描写を執拗に書き込んできたのに、「最も酷い虐待」に関しては、仄めかすだけで記述しないのです。
そんなことされたら、読者である石之介は、「最も酷い虐待」を想像しちゃって心の傷が出来てしまいますよ。
〜以降、ネタバレあります〜
結局、最後にはメグは壮絶な死を迎えてしまいます。
で、さらにその直後に主人公は「みんなの目の前で、でも誰にも気づかれずに」ルースを殺してしまいます。
メグのための復讐でしょうか。「メグを助けられなかった」自分のための復讐でしょうか。
でも、そのシーンを読んで、石之介は正直言ってスカッとしてしまいました。
人は、人を殺してスカッとしてはいけないんです。絶対。
なのに、そういう気持ちにさせられたこともこの作品の恐ろしさの一つだと思います。
お気に入り度=☆☆☆☆
確かに「心に残る作品」ではありますが、読まなくてもいい作品かもしれませんね。2~3日くらいの間、ネガティブになると思います。