現実の方が怖いとか、ベタなことを言ってみる。 『地下室の箱』 感想

4594031463 地下室の箱 (扶桑社ミステリー)
Jack Ketchum 金子 浩
扶桑社 2001-05 

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 読んだら後悔する系の作家、ジャック・ケッチャムの一昔前の作品です。
 じゃ、読んで後悔してやろう、という意気込みで本書を手に取りました。

【内容情報】(「BOOK」データベースより)

1998年6月のニューヨーク。サラとグレッグは病院に向けて車を走らせていた。現在独身のサラは妻子あるグレッグの子供を宿していた。そして彼らが出した結論は中絶。病院の近くでサラが車を降りグレッグが駐車場所を探しに走り去った直後だった。何物かがサラを車の中に引きずり込み連れ去った。失神させられたサラが意識を取り戻したのはどこかの家の地下室。ここで彼女を待ちうけていたのは不条理で際限のない暴行だった。あの『隣の家の少女』の悪夢が再び甦る。

 あれれ、読んでてもなんだか恐怖感が湧いてこないぞ。

 なぜか、を考えてみました。

 まず、犯人側の視点が多いので、心情が記述されてしまって、主人公視点に立った場合「あいつら、何を考えてるかわからないぜ」的な恐怖を感じられないのです。
 しかもその犯人の動機などに”想像しがたい”狂気を感じることはなく、ただ暴力的なエロ野郎なのです。
 しかもところどころで手際が悪いんですよね。
(逆にそういうところがリアルなのかも?)

 もう一点。
 主人公が精神的にタフネスなところ。
 犯人側に屈してる的なことを独白していたりするのですが、なぜか生命力を感じてしまいます。
 素直なんですよね、変化して行く状況に対して。
 だから、まあ、「もしかして、大丈夫なんじゃないの」とか思っちゃったりしました。

 結末に関しては、逆に意外でした。
 胎児・自分になつく猫、など希望を匂わせるガジェットを配置しておいて、逆に絶望へのギャップを演出するのかと思いきや……。
 そうきたか。 
 まあ、スッキリしたからいいか。
 
 あと、犯人側の奥さんが、積極的な協力者であるのは、なんだかアメリカっぽいな、と。少なくとも日本的ではないな。

 
 でも、本作の発表当初(2001年)に読んだら、もっと怖かったのかもしれないと思います。
 
 ここ2、3年監禁事件とかは本当に頻繁に聞くようになったんで、そう言う意味で恐怖を感じにくくなってるのかもしれません。
 (もちろん、自分や家族がそんな状況に置かれたら恐怖であることは間違いないのですが)

 いや、ホントに怖い世の中になりました。

 お気に入り度=☆☆☆

 次は名高い『隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)』を読みたいと思います。

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