素直に読めば良かった。 『終末のフール』 感想

4087748030 終末のフール
伊坂 幸太郎
集英社 2006-03

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 読み方を間違えてしまった! 素直に読めば良かった。

 本作『終末のフール』は滅亡まであと3年となった地球で過ごす普通の人たちの物語。
 8つの物語から成る短編集です。

 伊坂幸太郎に期待してしまうのは、「オシャレ」な会話にひょいっと隠された伏線が、終盤で気持ち良く回収されていく、というような構成なので、この作品に関してもそれを期待してしまいました。 
 それぞれの短編に何かが隠されていて、最後の一編で「何か」が起こるのだ!と勝手に決め付けて読んでしまっていました。
 でも、そんな大仕掛けはありませんでした。
 そういう意味の「素直に読めば良かった」です。深読みせず読むべきでした。

 とはいえ、逆に地球が滅亡しようとしているのに大仕掛けがない、というのもなかなか大胆な書き方です。
 病気でも老衰でもないけれども、確実な死。

 この作品の面白い部分は、滅亡を前にしたパニックを描いていないこと。
 おそらく凄惨な事件は数々起きているだろうことは、ちょいちょい仄めかされているんですが、あくまでそれは道具立てに過ぎず、主題は「死を受け入れた生」ということになると思います。

 興味深い企みだとは思いますが、正直もう少し突っ込んで欲しい気も。
 今は、地球が滅亡しなくたって、いつか必ず来る「死」を日々強く意識している人も多くいる時代だと思いますので。

 お気に入り度=☆☆☆
 
 読後感はよかったです。さわやか。

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