キマイラの新しい城 (講談社文庫) 殊能 将之 講談社 2007-08-11 by G-Tools |
『ハサミ男』を読んだら、殊能将之のいたずらっ子的な作品がもっと読みたいとか思ったので、本書『キマイラの新しい城』を手に取ってみました。
ストーリーは中世の騎士「エドガー・ランペール」が現代日本に蘇って(人に乗り移って)、自分の死の真相を知ろうとする、というもの。
エドガー・ランペール視点と三人称視点を交互に追いながら、物語は進んで行きます。
物語を追って行くと、さらに現代でも不穏な動き。殺人事件が起きてしまいます。
さらに、エドガー・ランペールに乗り移られた江里という男は、実は乗り移られていないんじゃないのか? 演技または思い込みなのではないか?という疑問も提示されていきます。
つまり、エドガー・ランペールじゃない頃の江里がどのような人物であったのか、という点も謎のひとつとなります。
まあ、そういったミステリ部分を追うのも楽しいんですが、この作品で読むべきはエドガー・ランペール視点の現代の風景。
地名なんかは東京→トキオーン、六本木ヒルズ→ロポンギルズと中世風に。人名も石動→イスルギーなんて感じで。
バイクや車を、奇妙な動物と思ったりするのは、ありがちといえばありがちなシーンですが、エドガーの大仰なものいいで表されるので、なんだかかわいいです。
週刊少年ジャンプであろう書物を見つけたときは「人が素手で格闘したり、剣を交えている絵が多い。字が読めぬ者のための武芸指南書であろうか」とか言っちゃうんです。
この読み心地は、森見登美彦作品に通じるものがあるかもです。
三人称視点はマジメかというと、正直言って悪ふざけしてると思うんですよ。(ホメてます)
地の文で石動のことを、「名探偵の石動戯作は」とか言っちゃってるんです。何回も。”名”は書かないですよね
普通。
しかも名探偵って何回も言ってたのに、結局石動は解決しないんですよ、事件を。別の人が解決しますけども。
ラストは、ちょっと切ないです。
切なく描こうとしているわけではなさそうですが、エドガー・ランペールのことを好きになってしまったので、「ああ、そうなのか」という感じで。
お気に入り度=☆☆☆☆
殊能将之の別の作品も読みたくなって来ました!