沈黙 古川 日出男 幻冬舎 1999-07 by G-Tools |
文章そのものが気持ちいい作家さんのひとり・古川日出男の第二作です。
図書館にあったんで、衝動借り(?)。
内容はこうです。
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
“あたし”秋山薫子の母を産んですぐに亡くなった見知らぬ祖母・下岡三稜の実家は、中野区に屋敷を構える大滝家だった。大東亜戦争時、あらゆる声と言語をあやつり固有の顔を持たぬ特務機関員として南方戦を生きた大滝鹿爾。防音された地下室で、ジャケットとレーベルのない数千枚のLPレコードを聴き、十一冊のノートを残した、その長男・大滝修一郎。「屋敷をぎりぎりまで成仏させたい」と願う三稜の姉・大滝静。謎の死と破滅と孤独–“あたし”が掘り起こした大滝家の来歴は、歴史の落とした影が血族の闇となっていた。そして、いまだ生き続ける呪詛。”あたし”秋山薫子は誰なのか?失踪を繰り返す弟・秋山燥は?生きとし生けるものを覆い尽くす『根源的な悪』の正体を明らかにし、生命の意味と生きる意思を啓示した傑作長篇。
『ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)』のように、ある時代の流れを体験していく話かと思いきや、違いました。
古川日出男の”あたし”節がうなってますが、これが二作目だとすると、”あたし”の原点なのかもしれませんね。
正直言って、楽しみました!
大筋は、失われた音楽”ルコ”を追う物語。
でも”ルコ”の歴史というのは実は……、というミステリ性もストーリーを引っ張ります。
そんな中でほんわかした日常の幸せもあったり、
旧い日本を想起させるコミュニティ活動があったり、
歴史に埋もれた真実や、当たり前だと思っていた感覚への問いがあったり。
”悪”との対決もある。見事な欺瞞もある。
とてもぜいたくな物語です。
阿片窟での大瀧と鹿爾の邂逅のシーンとかはめちゃめちゃカッコいいですし、薫子の覚醒のシーンも良いです。
でも、弟・秋山燥は登場当初、キャラクターとして魅力的だと思ってたのにあんまり出てこなくて残念。
かと思いきやちゃんと魅力的?になってしまいました(泣)
”あたし”と彼の仲が良かった頃をもう少し知りたかった(泣)
なんだか、とりとめのない感想になってしまいました。
だけど、そういうバラバラな部品が、”あたし”の体験に収斂されていくストリームを感じるための作品なんです。
『アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)』と『ロックンロール七部作』の両方を好き、という方にオススメ。
お気に入り度=☆☆☆☆☆
お金が出来たら買いますとも。