あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫) Laurie Lynn Drummound 駒月 雅子 早川書房 2008-03 by G-Tools |
えらく評判が高いのと、タイトルが良いので手に取ってみました。
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
警官志望のキャシーが助けを求める女性のもとに赴いた時、その胸にはナイフが突き刺さっていた。彼女はレイプ未遂犯の仕業だと主張するが、刑事は彼女の自作自演と断定した。だが6年後、事件は新たな展開を見せる。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」をはじめ、一人の男を射殺した巡査の苦悩を切々と描く「完全」など、5人の女性警官を主人公にした魂を揺さぶる10篇を収録。大反響を呼んだ傑作集。
10ページに満たない、ものすごく短い短編もあれば、中編ほどの長さのものもあり、主人公も各話によって変わります。
それぞれのエピソードはところどころ繋がりはあるけれども、”謎解き”的な意味合いでの繋がりはないです。
そして、ストーリーを引っ張っていくような大きな仕掛け、も存在しません。
しかしながら、読み終わった後の気持ちとしては、「読んで良かった」です。
実は、最初にトライしたときは読むのに挫折しました。
でも、ある日(疲れていたある日)一文一文を丹念に読んでみました。
(結末が知りたい、とか思うと、3行ずつ読む、とかやりがちですが、それを抑えて読んだのです)
そうしたら、あらら良い作品なんじゃないの、ということに気がついたのです。
そもそもこの作品はストーリーの起伏や結末を楽しむというよりは、作品世界に浸る、という読み方が合っているのだと思います。
そうすれば、葛藤やあきらめのなかにも存在する希望、などハッキリとしない感情を体験することができます。
(そう言う意味ではカタルシスを求めて読んではダメな作品ですね)
ただ、不満だった点としては、五人の女性警官を一人称で書いているのに、どの作品も似たような文体(一人称での文体はそれ自体がキャラクターを表していると石之介は思っています)で書かれているので、少し単調に感じてしまった、という点です。
特に好きな話は『キャサリンへの挽歌』『銃の掃除』『わたしがいた場所』です。
お気に入り度=☆☆☆☆
落ち込んでいる時に読んで、よりダウナーになってしまったので、4つです。
私的な理由ですいません。