かび (小学館文庫) 山本 甲士 by G-Tools |
痛快な作品が読みたい気分の時、見つけたのが本書『かび』。あらすじも以下のように紹介されています。
ムカつく…。主婦が大企業相手に戦闘開始!
幼稚園の送り迎えでの些細なトラブル、ねちっこく繰り返される姑のいやみ、ウェイトレスの尊大な態度……日々の怒りを呑み込んで、波風を立てずに生きてきた主婦・友希江。しかし勤務中に脳梗塞で倒れた夫を退職に追い込もうとする会社のやり口に、ついにキレた! 主婦一人、地元の大企業相手に、手段を選ばぬ報復を開始! 誰にでもある日常の不満から、闘争へと突入していく主婦の狂気を描き出す「巻き込まれ型小説」の傑作、ついに文庫化
面白そう!
普通の主婦が大企業と闘って、会心の勝利!スッキリ!
って読み終わるはずだったのに……。
痛快な気分にはなれませんでした。(面白かったけど)
主人公がどんどん暗い考え方に染まっていく様子が丁寧に描かれています。
これはホラー作品と言ってもよいくらいです。
でも、主人公がそうなってしまうのも仕方ないような世間の仕打ち。
実際読んでいると、「あー、こんな人いそうだわー」って納得しながら、イライラしてくると思います。
前半、主人公はそういう人たちの行動に我慢してしまうんですね。
はやくこのイライラを解放してくれー、と思いながら読み進めてしまうんですが、あのラスト。
やっぱり復讐心で行動するのは、みんなが切ない状況になってしまうんですね。
でも本書を読むと、「騒音おばさん」みたいな人の作られ方がわかります。で、そういう人たちに少し寛容になれると思います。
お気に入り度=☆☆☆
面白かったんですが、やっぱり読後感が……。