切なさの予感 『氷菓』 感想

氷菓 (角川スニーカー文庫) 氷菓 (角川スニーカー文庫)
米澤 穂信 

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「物事を叙述する文章というものがほとんど自動的に不幸の予感(または気配)を呼び寄せることに気づいた」と保坂和志は書きあぐねている人のための小説入門の中で語っており、保坂和志はその「不幸の予感」を感じさせないように小説をかいているらしいけども、米澤穂信の場合、「不幸の予感」をむしろ丸出しにした文体が特徴であろうかと石之介は感じています。

  で、「氷菓」です。
 神山高校古典部に入部せざるをえなかった奉太郎。そこで出会う少女・千反田えるに論理的思考力?を見込まれた奉太郎は、えるの隠された過去を”思い出させる”ため、神山高校の歴史をひもといていく、というお話です。

 メイントリックについては、驚きは少ないもののその文体も相まって非常に切ない感情を呼び起こすものになっている、と思います。

 また、高校生活で男女がせっかく(?)出会っているのに、ボーイミーツガール的要素は意図的に排除されてるように感じます。匂わせといて否定するという方法で。
 ありきたりな要素はなくそうという試みなのかもしれません。
 
 ただ、米澤作品において、時折描かれるアニメ的お約束シーンが、どうも鼻についてしまうことがあります。好みの問題なのでそういったシーンがあるからこそ好きという人の気持ちもわかりますが、石之介はそこで作品への感情移入が薄くなってしまうのです。石之介が頭の中で描いている登場人物の身体的動作となんだかマッチしないからです。これは読み手のワガママなのかもしませんが。

 お気に入り度=☆☆☆

 このシリーズは続いているようなので、読み続けるつもりです。

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