『四畳半神話大系』 感想

四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1) 四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1)
森見 登美彦 

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 森見登美彦の魅力的な文体(自意識が高くて自虐的で、でも誠実?な語り口)は「太陽の塔 (新潮文庫)」で如何なく発揮されているのですが、
 本作はさらに文体はそのままに、構成そのものが面白い作りとなっています。

 まず本作は以下の4編で存在します。

 『第一話 四畳半恋ノ邪魔者』
  主人公は大学で映画サークルに入るも、サークルの雰囲気に馴染めない話

 『第二話 四畳半自虐的代理代理戦争』
  主人公と同じ古アパートに住む「師匠」に弟子入りし、振り回される話

 『第三話 四畳半の甘い生活』
  ラブドールを誘拐したり、文通相手に妄想を抱いたりする話

 『最終話 八十日間四畳半一周』
  主人公の住む「四畳半」が別の世界の「四畳半」とつながっていて、そこからはさらに別の「四畳半」につながっていて……、という無限の「四畳半」世界から出られなくなる話

 4編は続きモノではなく、パラレルワールドとして存在しており、
 主人公は冒頭の「ある選択」により、全く別の大学生活を送ることになるのですが、
 それでも共通する出来事に関与していく、という構成です。
 (殺人事件みたいな仰々しいことが起きるわけではないですが)

 それぞれの話を単体として読んでも楽しめるレベルですし、どの話から読んでも楽しめると思います。
 特に『最終話 八十日間四畳半一周』はかなりSF色が強い設定になっていながらも、京都を忘れさせないその語りがそのSF的設定にリアリティを与えています。

 お気に入り度=☆☆☆☆☆
 これはかなり良いマジックリアリズム!
 でも、男子大学生の男汁が嫌いな人はダメかも。

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